社内SEとSIerでは、仕事内容や働き方にどのような違いがあるのでしょうか。
「SIerから社内SEへ転職したい」
「社内SEの方が働きやすいという話を聞くけれど、本当だろうか」
「これまでのSIerでの経験は、社内SEでも活かせるのだろうか」
このように考えているITエンジニアもいると思います。
私は大学卒業後、大手メーカーの情報システム部門に配属され、工場の社内SEとしてキャリアをスタートしました。
その後、情報システム部門の分社化によりSIer側となり、同じ親会社の工場を今度は外部から支援する立場になりました。
さらに地元SIer、ITベンチャーを経験し、現在は病院の情報システム部門で責任者として働いています。
つまり私は、社内SEとSIerの両方を経験してきました。最近では、病院の情報システム部門に応募された方の履歴書や職務経歴書を見る機会もあります。
この記事では、こうした実体験をもとに、社内SEとSIerの仕事内容や働き方の違い、それぞれに向いている人、SIerから社内SEへ転職するときに意識したいことについて解説します。
社内SEとSIerの一番大きな違いは「誰を支援するか」

社内SEとSIerの違いをシンプルに考えると、「誰のシステムを支援するのか」という点が大きいと思います。
社内SEは自社の社員・事業をITで支える
社内SEが支援するのは、基本的に自社の社員や自社の事業です。
私が新卒で配属されたメーカーでは、工場の生産管理システムや受発注システムなどの導入・運用支援を行っていました。
社内SEのよかった点として強く覚えているのは、現場との距離が非常に近かったことです。
同じ会社の仲間なので、朝礼で顔を合わせたり、社内イベントで一緒になったりします。システムについて問い合わせがあれば、そのまま現場へ行き、利用している様子を見ながら話を聞くこともできました。
一方で、自社の業務を理解することは欠かせません。
生産管理システムを担当するなら、生産工程を理解する必要があります。受発注システムなら、注文を受けてから製品を出荷するまでの流れを知らなければなりません。
私は設計部門のサポートもしていましたが、3次元CADの操作方法など、利用部門が使っている専門的なツールについても勉強する必要がありました。
社内SEにはITの知識だけでなく、自社の業務を理解する力も求められます。
SIerは顧客企業のシステムを支援する
SIerになると、自社ではなく顧客企業のシステムを支援する立場になります。
私の場合、情シス部門が分社化された後も、親会社の工場のシステムを支援していました。
支援する相手は同じでも、立場が変わったことで大きく変化したことがあります。
それが「お金」です。
社内SE時代なら、現場から問い合わせがあれば、そのまま対応することができました。しかし、別会社のSIerになると、仕事として受注しなければなりません。
以前ならすぐ対応していた依頼でも、「この作業を行う場合はいくらかかります」という話が必要になります。
同じシステムを支援していても、社内SEとSIerでは発注側と受注側という大きな違いがあることを実感しました。
社内SEとSIerでは仕事内容がどう違う?

社内SEはシステムを「導入して終わり」ではない
現在、私は病院の情報システム部門で働いています。
日常的に多いのは、利用部門からの問い合わせ対応です。
「パソコンが壊れた」「ネットワークにつながらない」「電子カルテでトラブルが起きた」「電子カルテと部門システムの連携がうまくいかない」といった問い合わせがあります。
情シスで解決できるものは自分たちで対応し、ベンダーでなければ解決できないものは、情シスからベンダーへ問い合わせます。
さらに、新しいシステムや機器を導入する場合には、見積取得、発注、納品までベンダーとの調整も行います。
社内SEの仕事は、システムを導入して終わりではありません。むしろ、導入後に安定して使い続けられるよう支援し、必要に応じて改善していくことが大きな仕事です。
SIerはプロジェクトを成功させることが大きな仕事
私がSIerで働いていたときは、システム導入やネットワーク構築のプロジェクト管理を多く経験しました。
顧客の要望を確認し、要件を整理し、決められた予算や期間の中でシステムを完成させて導入する。プロジェクトを成功させることが重要になります。
地元SIerでは病院の電子カルテ導入支援にも関わりました。実は、そのとき支援した病院が、現在私が勤務している病院です。
当時はベンダー側として電子カルテを導入し、現在は病院側として電子カルテを運用しています。
同じシステムでも、導入する側と使い続ける側では、見える景色がかなり違うと感じています。
両方経験して感じた社内SEとSIerの働き方の違い

SIerは「プロジェクト」、社内SEは「継続的な改善」が中心
SIerでは、プロジェクトごとに目標や納期が決められていることが多く、その中で専門的な技術やプロジェクト管理能力を高めやすいと感じます。
一方、社内SEは一つのシステムと長期間付き合うことになります。
導入後にどんな問題が起きたのか、利用者がどこに困っているのか、次に何を改善すべきなのかまで見届けることができます。
SIerは「プロジェクト」、社内SEは「継続的な改善」に関わる仕事という違いを、私は感じています。
私は若い頃、SEとして技術そのものへの関心が強かったため、設計や開発、構築に深く関われるSIerは魅力的でした。
現在は、これまでのプロジェクト管理経験を活かしながら、病院全体のシステム構成を把握し、各部門と調整し、新しいシステム導入を病院側のプロジェクトマネージャとして主導する仕事に面白さを感じています。
社内SEは技術だけでなく社内調整力も必要になる
社内SEというと、社内でパソコンやシステムを管理する仕事というイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし実際には、コミュニケーション能力や調整力がかなり重要です。
現在の病院でも、現場とベンダーの間にはシステムに関する知識の差があります。
現場とベンダーが直接やり取りした結果、双方の認識がずれ、後になって大きな問題となり、最終的に情シスが仲介に入ることもあります。
そこで、現場が本当に困っていることを整理し、それをベンダーに伝わる言葉に置き換える。逆にベンダーの説明を現場に分かるように伝える。
現場とベンダーの橋渡しも、社内SEの大切な仕事だと感じています。
社内SEとSIerでは給与・年収に違いがある?
社内SEとSIerのどちらが給与が高いのかは、気になる人も多いと思います。
私自身の経験では、「社内SEだから高い」「SIerだから高い」と単純には言えないと感じています。
私が最初に勤務したメーカーは非常に規模の大きな会社だったため、社内SE時代の給与水準は高いものでした。
その後、情シス部門が独立してSIerになりましたが、当初はメーカーからの出向だったため、給与体系はメーカー時代と変わりませんでした。後に転籍してからも、給与が大きく変わることはありませんでした。
一方、Uターンして地元SIerへ転職した際には、年収が100万円以上下がりました。その後、ITベンチャーへ転職したときも数十万円下がっています。
現在は病院勤務ですが、企業と比較すると賞与の考え方や給与体系にも違いがあります。
こうした経験から、給与は社内SEかSIerかという職種の違いだけではなく、会社の規模、業界、地域、役職、給与制度などの影響も大きいと感じています。
SIerで身につけた経験は社内SEでも活かせる

プロジェクト管理やベンダーとの調整経験は強みになる
SIerで身につけた経験の多くは、社内SEでも活かすことができます。
特に私が役立っていると感じるのは、プロジェクト管理とベンダーとの調整経験です。
社内SEになると、自分ですべてのシステムを開発するとは限りません。外部ベンダーに依頼しながら、新しいシステムを導入するケースも多くあります。
そのとき、SIer側がどのように見積を作り、どのようにプロジェクトを進めるのかを知っていることは強みになります。
応募書類を見る立場になって感じる「経験の伝え方」の大切さ
現在、当院では情報システム部門の求人を出しており、私も応募者の履歴書や職務経歴書を見る機会があります。
まだ私自身が採用まで経験したわけではありませんが、複数の応募書類を見るようになって感じることがあります。
それは、単に「SEを何年経験した」「○○システムを担当した」と書くだけでは、その経験を転職先でどう活かせるのかが分かりにくいということです。
どのような規模の仕事だったのか。自分はどのような役割を担当したのか。問題が起きたときにどのように対応したのか。
そして、その経験を転職先でどう活かせるのか。
SIerから社内SEへの転職を考えるのであれば、自分の経験を社内SEの仕事に置き換えて説明できるようにしておくことが大切だと思います。
社内SEとSIer、どちらが向いている?

社内SEが向いている人
社内SEは、一つの会社や業務に長く関わりたい人、利用者との距離が近い仕事をしたい人に向いていると思います。
また、技術だけに集中するのではなく、現場の話を聞いたり、部門間やベンダーとの調整をしたりすることが苦にならない人にも向いています。
SIerが向いている人
SIerは、さまざまなシステムや企業のプロジェクトに関わりたい人、設計・開発・構築などの専門性を高めたい人に向いていると思います。
私自身も若い頃は、技術を身につけ、システム開発やプロジェクトに深く関わることに面白さを感じていました。
どちらが優れているということではなく、自分がどのような仕事をしたいのかによって合う環境は変わります。
SIerから社内SEへの転職を考えるなら求人票だけで判断しない

SIerから社内SEへの転職を考えるときは、「社内SE」という職種名だけで判断しないことをおすすめします。
同じ社内SEでも、会社によって仕事の範囲は大きく違います。
情シスは何人体制なのか。
パソコンやネットワークも担当するのか。
業務システムはどこまで担当するのか。
ヘルプデスクも情シスが行うのか。
システムは内製なのか、ベンダーに委託しているのか。
夜間や休日の障害対応はあるのか。
こうしたことは、求人票だけでは分からない場合もあります。
応募前の情報収集や面接を通じて、「入社したら自分に何を求められるのか」を確認しておくことが大切です。
また、社内SEへの転職を考えているのであれば、実際にどのような求人があるのかを見てみるのもよいでしょう。
仕事内容や求められる経験、給与などを確認することで、自分のSIerでの経験がどのような企業で活かせそうなのかも見えてきます。
自社で腰を落ち着けて仕事がしたい方は【社内SE転職ナビ】へまとめ|社内SEとSIerは「どちらが上」ではなく役割が違う

私は社内SEとSIerの両方を経験してきましたが、どちらが優れているとは思いません。
若い頃の私は、技術を身につけ、設計・開発・構築に深く関われるSIerの仕事に魅力を感じていました。
現在は、これまで培った技術やプロジェクト管理の経験を活かしながら、病院全体のシステムを見渡し、現場やベンダーと調整する社内SEの仕事が自分に合っていると感じています。
SIerで身につけた技術やプロジェクト管理の経験は、社内SEに転職しても決して無駄にはなりません。
一方で、社内SEでは自社の業務を理解し、利用者とコミュニケーションを取り、社内とベンダーの間を調整する力も求められます。
社内SEとSIerのどちらに進むか迷ったときは、「どちらが楽か」だけで考えるのではなく、自分がどのような立場でITに関わりたいのかを考えてみてください。
顧客のシステムをプロジェクトとして支援したいのか。
それとも、自社のシステムに長く関わり、利用者と一緒に改善していきたいのか。
その違いを知ることが、自分に合ったキャリアを考える第一歩になると思います。